社会人からテニュア大学教員へ

40代で大学教員に転職したぽんこつ博士のブログです。研究・教育の世界に興味のある方へ情報をお届けできればと思っています。

教員公募について考える②

大学教員の求人は、一般に公募という形が取られ、「JREC-IN Portal」(以下、JREC)というサイトに掲載されます。

もちろん通常の就職と同じように、知り合いの伝手や一本釣りで選ばれることもありますが、それはまたの機会に述べたいと思います。

 

JRECでは勤務地、研究分野、職種別に公募の出ている大学等、研究機関の一覧をみることができます。

また検索条件を指定して、自分の希望する公募を探すことも可能です。

ユーザー登録をすると、検討フォルダに気になる公募を保存したり、検索条件を記録したりすることができるので、今後の検索活動が楽になると思います。

私はこれまでの習慣から、今でもほぼ毎日チェックしています(笑

 

各公募には大学名や所属に加え、様々な公募要件が記載されています。

具体的には専門分野、担当科目、職位、着任時期、任期の有無、待遇、締切などが記載され、さらに応募に必要書類などの応募方法が詳細に書かれています。

これらをみて、自分がここぞと思う大学を探し、応募書類を作成して送ることになります。

 

公募にエントリーすると、通常は書類審査が行われ、数名の候補者に絞られた後、面接が行われます。

そして、全てをクリアすると晴れて大学教員として採用されます。 

 

このような流れは、一般の求人サイトを経由した就職と似ていると思われますが、大学教員公募ならではの部分がありますので、注意点を挙げていきたいと思います。

 

① 専門分野

応募する大学を決める上で最も重要な部分ですが、厄介なことに大学によって書かれている内容がまちまちで、ざっくりしたことしか書いてない場合もあり、本当に求めている人物像がつかめないときがあります。

そのため、必ず該当する学部・学科・研究室のHPを確認し、研究内容、教育方針および教員配置を確認した方がいいです。

自分の研究分野が大学で行っている研究分野に近く、かつ既存教員と研究内容が重複していないことがポイントです。

あまりに研究分野が違えば敬遠されますし、かといって研究内容がかぶっていると多様性・発展性という面でデメリットとなってしまいます。

 

また年齢構成も大切です。特に同じ大学に残りたい場合はポストが空く時期なども考えた方がいいでしょう。

既に若い准教授や教授がいる教室では、自分が昇格することは難しい場合があります。

(准教授や教授が異動して、ポストが空くこともあるので一概にはいえないですが・・)

 

② 担当科目

これには全力で要望に応えるしかありませんが、複数科目が記載されている場合、どの科目が主軸となるのかは感じ取った方がいいでしょう。

オプション科目ばかり強いだけだとインパクトが弱くなってしまいます。

 

③ 着任時期

ある程度フレキシブルに対応してくれる場合が多いと思います。

 

④ 任期の有無

文科省は人材を流動化させ競争する環境の方が、良い研究成果が期待できると考えているので、任期ありの公募が大半です。

中でも助教は3~5年が多いのではないでしょうか。准教授や教授でも任期が設定されている場合があります。

ここで重要なのは再任条件だと思います。

再任なし、1回に限り再任あり、5年ごとに再任審査など、大学によって様々です。

3年で再任なしの助教の場合、2年目には次のポストを探し始めると思うので、現職で落ち着いて研究や教育が行いづらくなります。

なので、せめて5年、可能であれば再任可能な公募の方が精神的にいいです。

反面、条件が厳しい公募は、応募する人が少ない傾向にあります。

競争率が下がり、採用される可能性が高くなるという一面があるので、ブランクをおかずに研究・教育歴をカウントしたい人は考える価値はあると思います。

 

⑤ 待遇(給与・休み・福利厚生)

個人的には、大学教員の公募で最も一般常識と乖離していると思われる部分です。

裁量労働制ということは理解していますが、とにかく応募時点で給料が分かりません。

年俸制が多くなっている現在、退職金もないところが多いでしょう。

夏季休暇や年休、その他の福利厚生も不透明です。

大学教員になれるだけで満足でしょ。給与等の待遇は実際に勤めたら分かるよっていう感じです。

 

引越を伴う赴任の場合、先に住居を決める必要がありますが、一体家賃にどこまで捻出できるかはっきりしないまま契約することになります。

交通費もどこまで支給してもらえるのか分からないです。

これって企業なら完全にブラックですよね・・・

 

自分の例をあげますと、40半ばの国立大助教で年収600万でした。

中にはまあまあじゃんと思う人もいるかもしれませんが、平日は14時間、土日も毎週6時間ほど大学にこもり、帰宅後も作業を行っていました。年間340日は大学にいたと思います。

地方公務員だったときは週休2日で年収800万(残業月60~80時間:10~20時間程度サービス残業あり)だったことを思うと、明かに公務員時代の方が働きやすかったです。

 

ちなみに知人の私大准教授は、時間は比較的余裕があるものの、40歳で年収450万と言っていました。

有名私大ではそこそこよい給料がもらえる大学もあるようですが、個人契約なので人によってかなり差があるようです。

 

何が言いたいのかというと、大学教員という仕事は、博士号を取得するまでの学費・労力・時間、加えて就職状況を考えると、それほど割に合う給料・待遇とはいえないのが事実です。

既に家族のいる人の場合は、しっかりと人生設計を立てる必要があります。

 

⑥ 応募書類・応募方法

ほとんどの大学で履歴書、研究業績一覧、教育・研究に対する抱負、主要論文別刷が必要となります。

履歴書、研究業績一覧は大学独自の書式でまとめる必要があります。

雛形がWordのときもあればExcelのときもありますし、年号表記が和暦であったり、西暦であったり。

そして極めつけに、研究業績一覧では、論文タイトル、筆頭著者、連名者、責任著者、雑誌名、発行年、ページ数、査読有無、インパクトファクター等々を1つ1つ指定された表記方法で記述する必要があります。

同じ業績一覧でも大学によって書式が違うのでコピペができず、非常に時間がかかる作業となります。

機械的な作業となるので、応募を考えているときは、早めに作った方がいいです。

 

教育・研究の抱負は大学のHPをチェックして求める人物像を想定して書くようにして下さい。

研究や学生教育に尽力し、大学の発展に貢献したいことを自分の背景を絡めて書くといいと思います。

自慢話は厳禁ですが、教育手法や研究成果において、唯一無二のものがあればしっかりとアピールすることも必要です。

(**を○○する××を初めて報告し、□□に対する新たな知見を見出した)等

 

また応募者の意見を求めることが可能な人物2名あるいは推薦書を求められることも多いです。

これが通常の就活にはない要素で、非常にやっかいです。

大抵、大学院時代の恩師にお願いすることが多いと思うのですが、何度も公募に挑戦するようになると、そのたびに頼むのが心苦しいこと、心苦しいこと・・・

 

ここで注意点が1つあり、1つの公募に対して同じ人物からの推薦書は1通が原則です。

そのため、既に同じ公募に自分以外の人が推薦書を書いてもらっていた場合は、他の人に推薦書を頼む必要が出てきます。

推薦書には教授クラスの名前がほしいので、先約に取られないよう早めに依頼した方がいいでしょう。

 

応募書類一式を揃えたら、送付状を忘れずに添えて、指定の方法で送ります。

簡易書留やレターパックなど、追跡ができる方法で送付することが多いと思います。

応募時の封筒に「○△□大学助教 応募書類一式在中」などと朱書きすることが求められるのですが、夜間に何度も応募すると同じ郵便局の人に発送をお願いすることもあり、何だか気まずかったです・・・

相手は何も覚えてもいないと思うんですけどね

 

色々思い入れもあり、長文になってしまいました。

ネガティブな面が多く感じたかもしれませんが、大学教員は何ものにも代えがたい魅力的な部分があるのも事実です。

具体的に教員公募を考えている人であれば、恐らくその魅力を感じていることと思います。

私自身、アカデミックな世界の入口に立ったに過ぎませんが、何かの参考にしていただけると幸いです。